『奇跡』Miracle

DATE

10月2日(金)19:00開場/19:30開演

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草月ホール

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作品概要 Outline

構想40年、灰野敬二初の「作曲」はジョン・ケージ『4分33秒』への最終解答

もともと「即興」という概念や「能動/受動」という二項対立を無効としている灰野敬二にとって、「作曲」と「演奏」の間に本質的な境界はありません。それでも40年間あたためていたというこの『奇跡』は、ジョン・ケージ『4分33秒』、その「続編」『0分00秒』、そしてそれらの無数のヴァリエーションへの応答として「作曲」され、今回サウンド・ライブ・トーキョーで世界初演されます。会場はもちろん、『0分00秒』がケージ本人によって1962年に世界初演された草月ホール。

第一楽章 休止
第二楽章 休止
第三楽章 休止
『4′33″』(1952 [1])

最大限の音響的増幅(フィードバックが起こらない範囲で)が施された状況で、習熟した行為を行なうこと。
『4′33″ (NO. 2) (0′00″)』(1962 [2])

これらに対して灰野の「作曲」の内容は、88人の演奏者がそれぞれ1本の指で、1台のピアノの88鍵を同時に弾くというもの。灰野の「一音」という理念が反映するこの徹頭徹尾具体的な行為には、明らかに物理的な困難が伴います。どうすれば88人もの人間が幅約120cmの鍵盤の周囲に集まることができるのか。また、ピアノの88鍵という有限性を汲み尽くすこの行為、それに伴うと予想される88の身体の折り重なり、ねじれ、圧迫、痙攣、吊り下がりは何を意味するのか。そして88本の指で同時に鳴らされる音はどのように響くのか。

『搬入プロジェクト』の実績と建設現場での揚重工としての労働から得たノウハウを活用し、演出家・危口統之が手段を選ばず、厳粛に、かつ安全を確保しながらこのタスクを遂行します。危口の計算では「奇跡」の起こる確率は5分5分。

音を作曲者・演奏者の「意図」から解放し、「聴く」行為とその対象の無際限の拡張を時間的に分節する『4分33秒』、時間の枠さえ排して「あらゆることが起こりうるように、起こることすべてが受け入れられるように [3]」仕掛けられた『0分00秒』、その背後にある禅、平和主義アナキズム、テクノロジー礼賛、毛沢東主義、残酷演劇、エコロジーが融合した奇妙な思想は、現代のパフォーマンスやコミュニケーションを支えかつ規定している世界観の成立に、少なくとも象徴的に、少なからず寄与しています。その現状に対して、「音楽依存症」にして「本質的には歌手」を自認する灰野ケージが満を持して巻き起こす、汲めども尽きぬ問題提起と「奇跡」の瞬間をお見逃しなく。ご来場のみなさまにはもれなく『奇跡』のサイン入り楽譜をプレゼント。

[1] この形式の「楽譜」が書かれたのは1960年。
[2]「ケージは机に向かって座ると同作品のインストラクションを紙に書き始め、その筆記音がペンに装着されたコンタクト・マイクを通じてホール中に増幅された(そのとき書かれた紙が、後にこの作品の「楽譜」として出版された)」ポール・グリフィス(堀内宏公訳)『ジョン・ケージの音楽』(青土社、2003年)165頁
[3] ジョン・ケージ、ダニエル・シャルル(青山マミ訳)『ジョン・ケージ 小鳥たちのために』(青土社、1982年)167頁

スタッフ Staff

灰野敬二 作曲・指揮
危口統之 演出・設計

設計施工:石川卓磨、河本洋介、井出亮太、山本ゆい
調律:岩本尚子(株式会社松尾楽器商会)
打鍵検出回路:堀尾寛太
舞台監督:佐藤恵
制作:藤井さゆり
ケータリング:菅野信介、橋本富夫(アマラブ)
記録:中村公輔(録音)、松尾健太(映像)、前澤秀登(写真)
協力:有馬純寿、田部井美奈、イトケン

主催:サウンドライブトーキョー

『奇跡』実現可能性検証(2015年5月)撮影・編集:松尾健太
感想まとめ(togetter)

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